大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(行ナ)27号 判決

右当事者間に争のない事実及びその成立に争のない甲第一号証、甲第二号証の二、甲第六号証を総合すれば、原告の本件出願商標は、別紙記載のように「エスヤ」の文字をゴシツク体で縦書にして、構成されており、第七類風呂釜、焜炉、厨炉、暖炉、アイロン、温水罐、浴槽を指定商品とするものであること、及び審決に引用された登録商標は、別紙目録記載のように「S」の文字を中心とし、これの上部から下部に向けて矢が縦に貫き、矢と十字形をなすように、「S」の文字の左と右に、それそれ「Trade」「Mark」の欧文字が横書に分けて記載されて構成されており、旧第七類金属製クリツプその他他類に属しない金属製品一切を指定商品とし、明治四十三年十二月十四日登録、昭和二十五年十一月二十二日第二回の存続期間更新登録がなされたものであることを認めることができる。

よつて右両商標が、審決のいうように、類似するものであるかどうかを判断するに、原告の出願商標からは「エスヤ」の呼称が生ずるのは疑なく、引用登録商標は、前述の構成から、なるほど原告代理人の主張するように、「S」の文字に矢が当つているものと解し「エスアタリヤ」の称呼の生ずることも考えられないではないが、商取引の実際から見て、単に「エスヤ」と指称され、取引されることが自然であり、かつ一番多いものと解せられる。

原告は、登録第三五五九五一号、第四一八五九二号、第四一八五九三号商標の登録例を引いて、本件における引用登録商標からは、「エスアタリヤ」の自然称呼が生じ、「エスヤ」の称呼は生じないと主張するが、右三つの商標が併存登録されたことが、当然に本件引用登録商標が「エスヤ」の称呼を生ずるものとの前述の認定を覆えすものではない。

次いで引用登録商標における指定商品は、前述のように旧第七類金属製クリツプその他他類に属しない金属製品一切を含むものであるから、原告の出願にかかる商標の指定商品の大部分は、いわゆる「他類に属しない金属製品」として、これと互に牴触するものといわなければならない。

原告は、引用登録商標の指定商品のうちクリツプは旧第七類のうちに含まれず、これが商標主は日本において営業を行わない、原告の商標は、その指定商品について著名となつていると主張するが、本件において、指定商品の牴触を見るのは、むしろクリツプ以外の指定商品であることは前述するところであり、またその他の右の主張は、商標法第二条第一項第九号について、商標の類似するかどうかを判定するには関係のない事項と解せられるから、右の主張は採用することができない。

してみれば、原告の商標は、同号にいう「他人の登録商標と同一又は類似にして、同一又は類似の商品に使用するもの」に該当し、審決が、同規定を引いて、これが登録を拒絶すべきものとなしたのは相当であるといわなければならない。

原告代理人は、前述の三つの商標が同一の商品文房具に併立登録された登録例をあげ、登録例は特別の事情がない限り、判例のように重要視されなければならないのにかゝわらず、審決が、これと殆んど同一の関係にある引用登録商標により原告の商標登録を拒絶するについて、何等特別の事情のあることを示さないのは、判断を遺脱しているばかりでなく、かゝる差別は憲法第十四条の規定に違反し違法であると主張する。登録例が、商標の類否判定の基準を知る等の上に、実務上重要な役割を果していることは、これを認めるにちゆうちよしないが、一々の登録例が法律上はもちろん、事実上においても、必ずしも後の判断の基準としなければならないものばかりではなく、また本件にあつては、審決は、出願にかゝる原告の商標と引用の登録商標との関係について、登録拒否の理由を示せば足りるものと解せられるから、他の既登録例との関係において、いわゆる特別の事情を説明しなかつたとしても、重要な事項についての判断を遺脱したものとはいわれない。またよし同一の二つの商標の登録出願について、相異なる査定、審決がなされたとしても、ただその事実だけで、憲法第十四条に違反し、法律上不当な差別がなされたものとは解されないばかりでなく、その成立に争のない甲第七号証によれば、原告の引用する登録第三五五九五一号商標は、「S」の文字を丸で囲み、その外側に菱印の輪廓を付し、右輪廓内を左から右に矢が右を横に貫いている図形で構成された商標であることが認められ、本件における引用登録商標第四三八一七号とは、相違するものであるから、この点に関する原告の主張は、これを採用することができない。

〔編註〕 本件に関する商標は左のとおりである。

本件商標

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登録第四三八一七号商標

<省略>